個人的に注目している銘柄を1社ピックアップして紹介します。今回は、空調設備・衛生設備工事の専業大手として100年以上の歴史を持つ企業、株式会社朝日工業社(証券コード:1975)について特集します。
朝日工業社は精密な環境制御が不可欠な最先端施設の建設に強みを持つ企業であり、財務面の魅力とあわせて、詳しく解説しますので参考にしていただけると嬉しいです。
朝日工業社をざっくり評価
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- 収益性
- 3
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- 経営効率
- 3
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- 成長力
- 4
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- 割安度
- 4
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- 株主還元
- 3
- データセンター・半導体工場という「最難関施設」への空調工事実績と技術力
- 新設工事から省エネ改修・メンテナンスへの継続的な顧客関係構築
- 生産施設の国内回帰・外資系企業の日本投資拡大という構造的追い風
- 自己資本比率50.5%・ROE19.9%と一般的に望ましいとされる水準を大きく上回り、ROAも10.2%と財務体質・収益効率ともに良好。
- 2026年3月期は売上高1,048億円(前期比+14.0%)・営業利益116.8億円(+61.2%)・純利益92.4億円(+48.3%)と過去最高を大幅更新。
- 2027年3月期も4期連続の過去最高益更新を予想(売上高1,125億円・+7.3%、営業利益122億円・+4.4%)。受注高も前年同期比+17.2%増と先行きは明るい。
朝日工業社はどんな企業?
まずは朝日工業社がどんな企業なのか簡単に紹介します。企業の基本情報を以下の表に示します。
| 朝日工業社 企業概要 | |
| 会社名 | 株式会社朝日工業社 ASAHI KOGYOSHA CO., LTD. |
| 証券コード | 1975 |
| 業種 | 建設業 |
| 上場市場 | 東証プライム市場 |
| 創業年/設立年 | 1925年/1940年 |
| 資本金 | 38億5,710万円(2026年3月末時点) |
| 従業員数 | 1,148名(連結)(2026年3月末現在) |
| 事業内容 | ▼ 設備工事事業 空調・衛生・電気・防災用の設備工事などの設計・施工管理。 ▼ 機器製造販売事業 工場・研究施設向け空気清浄・加湿装置・除湿装置・省エネ型ヒートポンプ等の自社開発機器の製造・販売。 |
朝日工業社は日本最先端のデータセンター・半導体製造施設・医薬品工場・研究施設といった「精密な環境制御が不可欠な最先端施設」の建設に強みを持つ企業です。
朝日工業社は「空調設備工事」という分野において、単なる「エアコンの設置工事会社」ではなく、最先端施設の精密環境制御システムの設計から施工・保守まで担っています。一般消費者への認知度は低いですが、日本のインフラ・産業の発展を設備の面から支えてきた、まさに「縁の下の力持ち」的存在です。
朝日工業社の事業内容
朝日工業社は以下の2つの事業を展開しています。
設備工事事業

空調設備工事・衛生設備工事・電気設備工事・防災設備工事などの設計・施工・監理を行う事業です。データセンター・半導体工場・医薬品工場・研究施設・病院・商業施設など幅広い建築物の設備工事を担っており、新設工事に加え、既設設備の省エネ改修・更新工事・メンテナンス保守も拡大中です。2026年3月期の営業利益は前期比+64.0%と伸長しています。
機器製造販売事業

工場・研究施設向け空気清浄・加湿装置(エアワッシャー)・圧縮空気除湿装置(クールドライヤ)・省エネ型ヒートポンプ等の自社開発機器の製造・販売を行う事業です。2025年3月期の大型案件の売上計上後の反動減により2026年3月期は大幅減収・営業損失となっていますが、2027年3月期は回復を見込んでいます。
朝日工業社の強みとは?
朝日工業社が受注高・売上高とも過去最高を更新し続けられている主な強みを3つ挙げます。
- データセンター・半導体工場という「最難関施設」への空調工事実績と技術力
- 新設工事から省エネ改修・メンテナンスへの継続的な顧客関係構築
- 生産施設の国内回帰・外資系企業の日本投資拡大という構造的追い風
強み①:データセンター・半導体工場という「最難関施設」への空調工事実績と技術力

朝日工業社の最大の強みは、データセンター・半導体工場・医薬品工場・研究施設といった「精密な環境制御が不可欠な最先端施設」への空調工事に強いことです。これらの施設の空調設備は、一般のビルや工場とは比べ物にならない高度な設計・施工技術が必要であり、豊富な実績と専門人材を持つ限られた企業だけが担える市場です。
生成AIの普及に伴うGPUサーバーの大量設置で、従来比数倍〜十数倍もの発熱を持つデータセンターの冷却システム設計は最難関の技術課題の一つです。朝日工業社はこの分野での実績が積み上がっており、データセンター建設ラッシュの直接的な恩恵を受けています。
強み②:新設工事から省エネ改修・メンテナンスへの継続的な顧客関係構築

朝日工業社のビジネスモデルの重要な特徴の一つは、新設工事で関係を構築した顧客に対して、その後の設備更新・省エネ改修・メンテナンス保守という継続的なビジネスに繋げる「ライフサイクルサービス」の展開です。
省エネ・脱炭素化への社会的要請が高まる中、新築工事の顧客や他社が施工した顧客に共通して、省エネルギー提案や脱炭素提案などを行っていくという方針を掲げています。
ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル、使うエネルギーをつくるエネルギーが上回るビル)認証の取得支援や、高効率空調機器への更新工事の提案は、カーボンニュートラル目標を持つ企業・自治体に対して強力な訴求力を持ちます。一度施工した設備は老朽化すれば更新が必要であり、その際にも施工実績のある朝日工業社への継続発注が生まれやすい構造があります。
強み③:生産施設の国内回帰・外資系企業の日本投資拡大という構造的追い風

2022年3月期第4四半期以降、朝日工業社の業績を押し上げてきた最大の要因の一つは「生産施設の国内回帰や海外企業による日本国内への設備投資」という構造的なトレンドです。中国リスクの顕在化・円安加速を背景に、半導体・電子部品・医薬品・食品などの製造施設が国内回帰する動きが続いており、これらの工場建設に必要な空調・衛生設備工事の需要が急増しています。
TSMC熊本・ラピダス北海道・マイクロン広島などの半導体工場建設プロジェクトはいずれも超大型案件であり、今後の建設・稼働スケジュールに沿って空調設備工事の発注が継続的に発生します。10年以上にわたる長期的な受注見通しがある点で、朝日工業社の受注環境の好調は一時的なものでなく、構造的な需要拡大であると評価できます。
投資先としてみた朝日工業社

業績の推移
直近5年間(2022〜2026年3月期)の業績推移を確認します。年々売上高が増加しているだけでなく、営業利益率・ROEともに20%以上の非常に高水準で推移しており、収益力・経営効率も抜きんでています。
▼ 朝日工業社の直近5年間の業績推移

朝日工業社の業績は2022年3月期以降、生産施設の国内回帰や外資系企業の日本への設備投資拡大を追い風に成長しています。特に注目すべきは2022年3月期の売上高660億円・営業利益25億円(営業利益率3.8%)という低収益期から、直近2026年3月期には売上高1,048億円・営業利益116億円(利益率11.1%)へと急成長した点です。わずか4年間で営業利益が約4.6倍に増加しています。
2027年3月期も売上高1,125億円・営業利益122億円で4期連続過去最高益の更新を見込んでいます。第1四半期(4〜6月)は売上高194億円(前年同期比+10.2%)・営業利益22億円(+16.8%)・受注高も+17.2%増と好調なスタートを確認しています。
株価の推移
朝日工業社の直近3年間の株価月足チャートを以下に示します。
▼ 直近3年間の株価月足チャート

出典: TradingView 朝日工業社(1975) 月足チャート
赤ライン:12カ月移動平均線 青ライン:24カ月移動平均線 緑ライン:60カ月移動平均線
朝日工業社の株価は2025年から2026年にかけて大きく上昇しており、移動平均線も全て上向きの強い上昇トレンドに乗っています。データセンター・半導体関連の設備工事需要の急拡大への期待と実績の好調さを背景に、2024年後半から2026年前半にかけて株価が上昇を続け、2026年2月には2026年3月期決算の大幅増益発表を受けて4,700円台まで急騰しました。
直近は、調整局面に入っており4,000円付近で推移しています。
ファンダメンタルズ分析
▼ 株価水準・業績・株主還元指標(※PER/PBR/配当利回りは2026年9月4日時点で計算)
| 朝日工業社 分析指標 | |
| PER | 10.8倍 |
| PBR | 2.0倍 |
| 2026年3月期 ROE | 19.9% |
| 2026年3月期 ROA | 10.2% |
| 2026年3月期 自己資本比率 | 50.5% |
| 2027年3月期 予想配当利回り | 3.7% |
| 2027年3月期 予想配当性向 | 40.3% |
| 直近10年 配当実績 | 増配5 減配3 据置2 |
| 株主優待 | なし |
PER10.8倍・PBR2.0倍という水準は、建設業の中では割安感がある株価水準といえます。自己資本比率も2026年3月期の50.5%と、財務の健全性が確保できています。
配当は年間144円(2027年3月期予想)で、現在の株価水準に対して3.7%の配当利回りとなっており、高成長・高ROEを維持しながら安定配当を続けている点は、長期投資家にとって魅力的です。
朝日工業社の将来性

朝日工業社の業績に今後プラスに働くと思われる要因とリスク要因をそれぞれ2つ解説します。
プラス要因①:AIデータセンター・半導体工場建設ラッシュの長期継続
生成AIの急速な普及に伴い、日本国内でのデータセンター建設投資は今後10年以上にわたって高水準で継続すると見込まれています。AIワークロード専用のGPUサーバーは熱密度が従来比数十倍に達する場合もあり、精密な空調・冷却システムの設計・施工への需要は構造的に増大する見込みです。
また、TSMC熊本工場(第2・第3工場の建設が続く見通し)・ラピダス北海道(量産稼働に向けた施設整備)・その他の半導体関連工場建設プロジェクトは複数年にわたる大型受注として計画されており、朝日工業社の受注残高の積み上がりが業績の安定成長を支えます。
プラス要因②:省エネ・ZEB・脱炭素対応工事という新たな大型市場の開拓
日本政府が掲げる2050年カーボンニュートラル目標の実現に向けて、既設建物の空調設備を高効率機器へ更新する省エネ改修工事と、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)認証取得を支援する工事の市場が急速に拡大しています。
多くの企業・官公庁・金融機関が「2030年までに○○%のCO₂削減」というコミットメントを表明しており、建物の空調設備の省エネ化はその達成手段として不可欠です。
朝日工業社はこの省エネ提案・脱炭素提案を既存顧客向けの新たな収益機会として積極的に活用しており、新設工事だけでなく既設建物のリニューアル市場でも存在感を高めています。
リスク要因①:技術者・施工管理者の人材不足と労務費の上昇
建設業界全体で深刻化している技術者・施工管理者の人材不足は、朝日工業社にとっても重要なリスクです。受注が好調でも施工できる人材が確保できなければ、受注を断らざるを得ない状況が生じます。
また2024年4月から適用された「建設業における時間外労働の上限規制(2024年問題)」に伴い、労務費の上昇圧力が続いています。優秀な施工管理者・技術者の確保と育成が今後の成長のボトルネックとなる可能性があります。
リスク要因②:機器製造販売事業の業績不振と景気変動への感応度
機器製造販売事業(売上比率5%)は、2025年3月期の大型受注案件(クールドライヤ関連)の反動減により2026年3月期に大幅減収・営業損失となりました。売上比率は小さいものの、この事業の採算悪化がグループ全体の利益率を押し下げるリスクがあります。
また、設備工事事業全体として民間設備投資に連動する景気感応度を持っており、景気後退局面では受注が減少する可能性があります。リーマンショック後やコロナ禍では建設投資が急落した経験があり、好況期の受注拡大が長続きしないリスクは常に念頭に置く必要があります。
まとめ:AI・半導体・脱炭素の3大追い風を受ける空調設備工事の雄
今回は空調・衛生設備工事の専業大手として、データセンター・半導体工場・省エネ改修という複数の成長テーマを同時に享受する朝日工業社(1975)について分析しました。以下に主なポイントをまとめます。
- 1925年創業の空調・衛生設備工事専業大手。データセンター・半導体工場・医薬品工場など「精密環境制御施設」への空調工事に高い専門性と実績を持つ。
- 2026年3月期は受注高・売上高ともに初めて1,000億円を突破。売上高1,048億円(+14.0%)・営業利益116.8億円(+61.2%)・純利益92.4億円(+48.3%)と過去最高を大幅更新した。
- 生産施設の国内回帰・AIデータセンター建設ラッシュ・半導体工場の国内建設(TSMC熊本・ラピダス北海道等)という複数の構造的追い風が重なり、受注環境は過去最高水準で推移している。
- 2027年3月期は売上高1,125億円(+7.3%)・営業利益122億円(+4.4%)の4期連続最高益更新を予想。自己資本比率は50.5%と比較的高く・配当利回り3.7%と財務指標・株主還元とも良好。
- データセンター・半導体工場建設ラッシュや省エネ建設需要の伸長に伴う業績成長に期待できる。一方で技術者人材不足・景気変動への感応度がリスクとして存在する点には注意。
朝日工業社は、AIデータセンター・半導体工場・省エネ改修という複数の構造的成長テーマを空調設備工事という切り口で取り込める珍しいポジションの企業です。知名度の低さから市場での評価が遅れがちですが、4期連続過去最高益更新という業績の実力は確かです。
PER10.8倍・PBR2.0倍という現在のバリュエーションは、ROEの持続と追い風が吹いている業種であることを考慮すると割安な水準にあるとみています。3%台の配当利回りを享受しながら中長期で保有するアプローチが、業績成長と株価上昇を同時に狙えるベストな戦略といえます。

